「朝になると,みすぼらしい服を着た少女がカベによりかかって,動かなくなっていました」。マッチの中の夢を見すぎた少女は,新年を迎えずに死んでしまった。彼女に,必要だったものは,なにか?
スティーブと呼ばれる客人が持ってきたのは,シンクパッド1620上で動いているマックOSと,クイックタイムとXトークを基としたPDAだ。彼はそれらを一度に発表して業界を驚かす,と云った。それは2001年の初夢,か?
瀬戸際の経営を立て直すため,使える手はなんでも使うだろうということで,噂もほどほども盛り上がった。いつもいつも話にのぼるサブノートや,やっとこさクロックアップするパワーマック。iMacもそろそろデザイン的な刷新が必要なことだし,廉価版キューブとしてリニューアルされると云う話もあるし。だが,現在の,パソコンがまったく売れない状況を考えると,新しいパソコンを出してもたかが知れているとして,PDAや携帯電話,ネットワークセットトップボックスという話もあったりして。過去に出た噂が勢ぞろいしている様相でもある。
だが,楽しいのはときに噂だけ。夢の中で見た噂は,目が覚めたときにどのような現実をみせてくれるのか? 夢のような製品だったキューブも売れないという現実は,常に冷ややかな事実をみせてくれた。夢見る少女であったマッチ売りの少女は,結局大みそかの寒さの中で死んでしまう。現実とはそんなもんだ。そして現実を乗り切るには,夢よりも確かな生きる希望が必要だ。もうすぐ,目覚める。目覚めのコーヒーの湯気が,緩やかに立ち上る。その湯気の中に,未来が見える。
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